あいうえです。今日はスマートベータの中でも異色であるモメンタムについて書こうと思います。
1 モメンタムとは
モメンタムとは一般に、ある日の指標とその数日前の指標の差のことを言います。
例えば今日の株価が100だとして、1年前の株価が90だったとすれば、この一年間のモメンタムは+10であると言えます。
それだけを指す単純なものですが、意外と役に立つと言われています。
テクニカル分析には普通に「モメンタム」というのがありますし、一目均衡表の遅行線とは26足を基準にしたモメンタムに他なりません。
(一目均衡表はかなり昔に作られたものであることを考えると、作成者がいかに先見の明にあふれていたかがわかります)
では、スマートベータにおけるモメンタムとは何なのでしょうか?
2 スマートベータにおけるモメンタム
スマートベータにおけるモメンタムは上のとは異なり、正確には「モメンタム効果」のことを指します。
モメンタム効果とは、端的に言えば上がった株はさらに上がり、下がった株はさらに下がるというものです。
ある種のアノマリーのようなものですが、世界中の市場に存在するそうです。
雑な言い方をすれば、「順張りの方がいいよ~」ということにもなるかもしれません。
ということで、単純に最近上がった株を組み入れる戦略をモメンタム戦略といいます。
大体はここ一年間の上昇率を使うことが多いようです。
そして、モメンタム戦略は歴史的に時価総額加重をアウトパフォームしてきました。
そりゃモメンタム効果が存在しているならモメンタム戦略が有効なのは当然ですよね。
しかし、頑張って成長率の高い企業を探すグロース投資がいまいちうまくいかないのに対して、単に株価の伸び率が高い企業を買うモメンタム戦略がうまくいくというのはなんとも面白いです。
3 モメンタムと平均回帰
しかし、モメンタムは微妙に直観に反していると言えます。
その直感とは平均回帰です。
平均回帰が主張するのは、いつかは平均に戻りますよーというものです。
モメンタムの主張は、言い換えれば、平均からずれたものはしばらくの間さらに大きくずれるというものです。
では、どちらが正しいのでしょうか?
モメンタム効果と平均回帰を両立させるなら以下のようになります。
短期的にはモメンタム効果が優勢で、長期的には平均回帰する。
両立させるにはこれしかないので、おそらくこれが正しいということになるのでしょう。
例えば、先ほど述べた「一年間の株価上昇率」を「十年間の株価上昇率」にするとおそらくモメンタムは持続しないでしょう。
そして、モメンタム戦略は「直近一年の株価上昇率」をもとに定期的に構成銘柄を変えることで、モメンタム効果が優勢な時期の恩恵を常に受けることができるということになります。
これを採用するのはご都合主義感が出てしまいますが、しかし、どうやらそうみたいなのです。
モメンタムと低ボラティリティ(第二回で紹介)は「よくわからんけどどうやらそうなるみたい」という何とも言えない内容です。
しかし、あのバンガード社が小型バリューと並んで「持続性がある」と評している2つでもあるという不思議もあります。
参照:
ちなみに、バンガード社もついにスマートベータETFをローンチするみたいです。
参照:
バンガード社はスマートベータに否定的なイメージがあったので意外ですが、そんなバンガード社が提供するスマートベータがどのような戦略をとるのかはとても興味がありますね。
一口にスマートベータといっても、運用会社によってその中身はかなり違いますからね……。
有名どころで言えば、ウィズダムツリーはどちらかと言えば過激派(時価総額をまったくと言っていいほど使わない)のに対して、ブラックロック社は比較的穏健だったりします。
4 モメンタムの使い方
個人的には、モメンタムは他のスマートベータとの組み合わせに真価を発揮すると思います。
モメンタムは純粋な順張り投資なので、割安株への投資という側面をもち下落相場に強い他のスマートベータとは真逆とも言えます。
(ファンダメンタル加重のスマートベータはバブルに乗らないことで良好な成績を収めますが、モメンタムは徹底的にバブルに乗る戦略です)
なので、他のスマートベータとの相関係数が低いです。(流石に債券みたいに負にはなりませんが)
ということは、分散効果を得られるということです。
逆に言えば、モメンタムはその性質上バブルに非常に弱いので、いくら成績が良くても集中投資は避けた方が賢明だと言えるでしょう。
モメンタムはバブルに徹底的に乗っかる戦術ですからね。
とはいえ、スマートベータ界での支持が比較的高いモメンタム戦略はポートフォリオのリターンを向上させる可能性が高いと思うので、結構おすすめです。
お読みいただきありがとうございました。
何かございましたら気軽にコメントしてください。
こちらは連載記事がまとまってるページへのリンクになります。