どうも、あいうえです。
最近MLPというものを知りまして、よくわかんないなーと思いながらもいろいろ調べたのでこの記事ではその成果をまとめてみようと思います。
1 そもそもMLPとは
おそらく、MLPは投資をやっている人でも知っている人がほとんどいないと思うのですが、MLPとは分かりやすくいえばエネルギー版REITです。
MLPとは投資家から集めた資金を使ってエネルギー事業を行い、その収益を投資家に還元する共同投資事業となります。ちなみにエネルギー版REITと言っている通り、今の説明における「エネルギー」の部分を「不動産」に変えるとREITの説明に早変わりします。
MLPのユニット(要は株)というのは普通にアメリカの市場に上場されているので、そういう意味では株とあまり変わりません。
しかし、エネルギー版REITであると上で書いた通り、REITと同じく収益のほとんどを配当として分配する代わりに税制面での優遇を受けているのがMLPの特徴となります。
そのためMLPはとてもとても高配当であり、歴史上の平均利回りは米長期金利 + 3.5%前後とジャンク債よりも高いです。
めちゃくちゃ高いですね。政策金利じゃなくて長期金利ですからね。
またMLPはエネルギー事業と言っても、油田の開発や販売を行っていることはあまり多くなく、貯蔵・輸送(中流)事業が中心となっています。
このように、貯蔵・輸送時の手数料で儲ける体質のため(理論上は)エネルギー価格の影響を受けにくく、キャッシュフローが安定している傾向があります。
注:キャッシュフローは配当金の源泉だと思っていただければ問題ないです。
しかもそんなキャッシュフローは年々成長しているため、MLP投資家はインカムゲインだけでなくキャピタルゲインも期待できるのがそのメリットとなります。
2 MLP価格を決める要素
先述した通り、MLPは理論上はエネルギー価格の影響をあまり受けず、キャッシュフローが安定しているため本質的な価値はあまり変わりません。
ところがどっこい現実はそう甘くはありません。MLPはボラティリティが大きいことでも有名です。
MLP市場を表しているAlerian MLP Indexを見てみましょう。
Google Financeを使ったSP500との比較チャートがこれです。
青色のMLPのグラフは、ザ・ジェットコースターという感じのグラフですね。ゆっくり上がって急降下してます。
これを見てMLPへの投資を止めたいと思う方もいるかもしれませんのでここで一旦MLPの擁護をしておきます。
まず、ここ10年くらい低迷しているだけで配当金再投資(税金込み)のMLP長期リターンは株式を上回っています。株式の長期リターンを上回っている数少ない投資先がMLPです。ちなみに他にはREITもそうだったり。
MLPの擁護でした。
MLPはボラティリティが高いという話に戻します。
では、ボラティリティの原因となっているもの、つまり、MLPの価格を決めているものが何であるかを見ていきましょう。
1 原油価格
理論上はエネルギー価格の影響を受けないはずなのですが、先ほどのチャートを見たらわかる通り、原油価格の影響をモロに受けています。
データを見る限りMLPのキャッシュフローはまったく原油価格の影響を受けていないので、連想売りの面も強いのですが、MLPが貯蔵・輸送契約を結んでいる相手側の倒産リスクが増していることによってMLPが売られているという一面もあると思います。悲しいなぁ。
2 景気
景気も理論上はMLPのキャッシュフローにあまり影響しません。
なぜならMLPが結んでいる契約というのは長期契約なので、景気に関係なく契約通りの収入が入ってくるからです。
ただ、これも先ほど書いたのと同じように相手側の倒産リスクがあるということで売られている可能性はあります。
それに、不景気になると原油価格は下落しますからその影響もあると思います。
さらに、単純に市場から資金が引き上げられたせいで下がっているだけという感じもあります。すべてが連動している現代の金融において、不況の影響を受けるなという方が難しいですからね……。
3 長期金利
MLPに限らず高配当系のものは基本的に長期金利の影響を受けます。
安全資産である米国債の長期金利が上がればMLPの魅力は相対的に下落するので、十分な魅力になるまで調整をするのです。
……というのが高配当系全体に対する一般的な投資理論ですが、意外なことに金利とは相関がないという話もあります。
まとめ
以上説明した3つの要素によってMLP価格は決まっているのですが、その結果として株式並み・もしくはそれ以上のボラティリティになっています。
また、景気には比較的敏感に反応するので、株価との連動性はそこそこ高いです。
原油価格にも影響されるので完璧な連動をみせるわけではないのですが、景気に敏感なMLPをポートフォリオに採用したとても分散度合いがあまり高くならないことは留意しておくべきでしょう。
3 MLPのバリュエーション判断の仕方
では、MLPのバリュエーションはどのように判断したらいいのでしょうか?
まず挙げられるのはキャッシュフローです。
あれ、PERとかは?とお思いの方もいるとは思いますが、PERはMLPにおいては役に立ちません。
どれくらいのキャッシュフローを稼いでいるかで見た方が正確に判断できます。
収益のほとんどを配当として還元するMLPにおいては、キャッシュフローは投資者の利益に直結しますからね。
過去のデータの話をすれば2005年以降毎年(リーマンショック時含め)キャッシュフローは増加しており、今後も順調な成長が見込まれています。
キャッシュフローは、増えていれば順調に成長している、減っていれば停滞している、などのように大まかな傾向を把握するのに使うといいでしょう。
次にバリュエーションを判断するのに使われるのが利回りです。
キャピタルゲインも得られるとはいえ投資家の収益のほとんどは配当という形で得られるので、常に長期金利や投資適格債、ジャンク債との利回りの比較がなされます。
一般には長期金利と比較して過去平均よりスプレッドが開いていたら割安、狭まっていたら割高という判断がなされます。
さいごに
ということでMLP投資についてでした。
最後にということでいざ投資をする際の注意点を述べておきます。
まず、MLPは基本的にはドル建て資産になるので、投資の際には為替リスクがあります。為替ヘッジをつけるかは個人の判断でしてください。MLPというシステムがアメリカにしかないように見受けられます。
次に、MLPを利用した投資信託にはタコ足配当により見かけ上の利回りを高くしている悪質なものがいくつか存在しますので注意してください。これは大事。
また、資産運用開始時期によっては著しく成績が悪いことがありますが、最近のMLP市場の低迷によるものであり長期成績は悪くないことも覚えておくといいでしょう。気休めになります。
MLPは株式に比べると主流の投資先ではないという感じは受けますが、コモディティと株の両方の性質をもつということで投資対象としては魅力的です。配当利回りも高いですし、長期リターンを考えるとサテライト枠としてはかなり有力。
皆様も検討してみてはいかがでしょうか。
お読みいただきありがとうございました。