どうも、あいうえです。
この記事のテーマは、何やら最近広まりを見せているESG投資についてです。
ESG投資のことを知らない人もいると思いますので、ネットの辞書からその定義を引っ張ってみましょう。
ESG投資とは
環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮している企業を重視・選別して行う投資。環境では二酸化炭素の排出量削減や化学物質の管理、社会では人権問題への対応や地域社会での貢献活動、企業統治ではコンプライアンスのあり方、社外取締役の独立性、情報開示などを重視する。
な投資法のことを指します。
環境――地球のことを考えて、社会――人権問題とかへの意識も高く、コーポレートガバナンスがしっかりしている企業に投資しましょうね~という投資法です。
ということで、次項からそんなESG投資の是非について語っていきましょう。
1 機関投資家と個人投資家の間にある温度差
これは私の体感で申し訳ないのですが、ESG投資というのは機関投資家と個人投資家の間にずいぶんと温度差があるイメージがあります。
具体的には「ESG投資を賛美する機関投資家」VS「え、ESG? は? な個人投資家」と言った感じでしょうか。
この「は?」には、そんなの初めて聞いたの「は?」も含まれていますが、少なからず「知ってるけどそんな馬鹿っぽい投資法なんてやらない」という侮蔑の意味も含まれています。
もちろんこれは私の主観なのですが、実際にこれくらいの温度差があると思います。
するとその理由が気になってしまうのが人間という生き物なのですが、私も人間なのでいくつか思いつく理由を挙げてみましょう。
1 個人投資家は利己的だから
ふむ。機関投資家が利己的でないというのはおかしいような気がしますが、とはいえ、後述するように「綺麗な投資」というものをするインセンティブを持つ機関投資家は存在します。
2 機関投資家も好き好んでESGをやってるわけじゃない
近頃うるさいポリコレに「配慮」しているわけですね。これが一番現実を言い当ててる説明だと思うのはポリコレを嫌いすぎでしょうか。
3 ESG投資は儲かるという情報を機関投資家は知ってるから
事実、ESG企業のリターンは高いという話は存在します。
……まあ、どれもこれも半分合っていて半分違っているというのが正解なのでしょうが、いま挙げた点というのはESG投資を考える上での論点になりうるものです。
つまり、ESGは欧米にありがちな綺麗事でしかないのか、それとも投資家にベンチマークを上回るをもたらしてくれるものなのか、という論点です。
結局のところ、個人投資家が気にしているのはそこなのですから。
2 ESG投資は儲かるかもしれない……違う意味で
個人的には、ESG投資がベンチマークを上回る超過リターンをもたらす可能性は低くないと思っています。
しかしそれは、ESG投資界隈でよく言われる「ESGの面で優れている企業は長期的に見ていい業績を残す」といったような理由ではありません。
ESGをしっかり意識している企業は業績がいい → 業績がいいから株価があがる、という健全な形でESG投資が報われるのならばそれは理想的なのでしょうが、むしろ、そのような健全な形で報われることはないだろうということです。
むしろ、VICEファンドというのが歴史的にはいい成績を収めています。
ではどのような形でESG投資がベンチマークを上回るのかというと、バブルという形でならありうると思っています。
まあ、バブルって簡単に起こるものではないので、ESG投資がバブルになる可能性は低いとは思いますが、なぜ私がそんなものを思い浮かべたのかと言いますと、年金の運用をしているGPIFがこんな資料を作っているからです。
この右下にある好循環を描いたものを見てみてください。
ESG投資拡大→ESG対応強化のインセンティブ拡大→日本企業のESG評価向上→ESG投資・日本株のパフォーマンス改善→年金財政の健全化→ESG投資拡大→…………
仮にも投資をしているGPIFがこんな資料を作るなんてはっきりいって笑止千万です。
だって、このサイクルが示してるのってバブルそのものですよ?
バブルの定義を「株価が実態(企業利益)を離れて推移するもの」とするならば、このサイクルが示しているのはバブルそのものです。
特に「日本企業のESG評価向上→ESG投資・日本株のパフォーマンス改善→年金財政の健全化→ESG投資拡大」の部分は馬鹿馬鹿しいにもほどがあります。
企業利益の向上ではなくESG評価向上によってESG資金が流入し、それによってパフォーマンスがよくなり、パフォーマンスがいいということでESGに新たな資金が流入する……これの行きつく先はESGバブルです。
ドットコムとかブロックチェーンとかを社名に入れるだけで株価が高騰するのと何が違うのでしょうか?誰か教えてください。
もっとも、GPIFがこんな資料を作ったぐらいでバブルになるようなもんじゃありませんが……はい、でも、正直に言って呆れました。GPIFはまたバブルが起こるのを願っているのでしょうか?
3 ESGと年金
しかし、GPIFがこんな資料を作っているのはまったくの偶然というわけじゃありません。
結構前に、ESG投資をするインセンティブをもつ機関投資家がいると書きましたが、ESG投資は年金運用に比較的人気があります。
年金運営というのは半分民営、半分公益な事業ですから、必ずしもリターンの最大化を目指す必要はありません。
年金を渡す相手が居なくなったら年金運用なんて意味がありませんからね、ESG――それもEnvironmentを意識するのはある意味当然かもしれません。
それは逆に言えば、ESG資金には年金資金による下支えがあるとも言えます。もちろん、それらの資金による下支えは常に存在するのですが、ESGはその支えが厚いということです。
企業にとって長期保有してくれる株主が貴重なように、年金という長期投資資金による下支えは大きいです。これは一つESGにとっていいことかもしれません。
しかし、それらの下支えには限界があることにも注意しなければなりません。
そもそも、年金基金のポートフォリオにおける株式の割合は長年増え続け、頭打ちの様相を呈しています。これは、昔ほど年金マネーを当てにできないことを意味します。……というより、年金基金の運用額を考えると、1952-1990年ごろまでは株式市場が過大評価を受けているとしてもいいレベルです。
Future U.S. Equity Returns: A Best-Case Upper Limit | PHILOSOPHICAL ECONOMICS
また、もはや日本特有の問題ではなくなった少子高齢化も問題です。少子高齢化が進み年金基金が積立金の大幅な取り崩しを迫られてしまうと、年期基金は市場から否応なく資金を引き揚げます。
年金マネーを期待してESG投資をするというのは一ついい手段だとは思いますが、それに大きすぎる期待を寄せてもいけないでしょう。
結局のところESG投資はどうなのか
結局のところ、ESG投資はいくつかの面で有用かもしれません。
将来のESGバブルの可能性を見越して先に買っておいたり、年金基金による買い支えに期待するなどです。……まあ、ESGスコアの高い企業が高いリターンを残す可能性もあります。
ただ、バブルだとか、年金基金だとかを期待しなけりゃいけないような投資法を私はしませんし、人に薦める気も起きません。
もちろん、ETFという形で十分に分散されたESG投資をするのであれば、さしたる大怪我もしないのでESG投資をしたいという人を止めるつもりもありませんが、やはり、ESG投資は何かが違う、というのが私の結論です。
お読みいただきありがとうございました。