とあるオタクの長期投資

投資、時々ラノベオタク

MMTとは何なのか?


スポンサーリンク

 

経済ってのは、帳尻が絶対に合うものだと思っています。100%。そのことが織り込まれていない経済理論はすべてブードゥー経済学の類です。

 

中世の錬金術師すら、ゴールドが無からできないことは分かっていたのですから、無から富が生まれることはありません。

 

経済はいつかどこかで帳尻が合うのであって、例えばそれがレイダリオの長期債務サイクルです。70年前後で一周する長期債務サイクルが、債務がフリーランチでないことを非常に分かりやすく教えてくれます。

 

誰かの負債が誰かの資産だというのなら、二つ合わせて0でおしまいです。すなわち、負債があろうがなかろうが0は0、でしょ? 国が積み上げた負債の分だけ他の誰かが幸せになるってことはないわけです。

 

レイダリオが「美しきデレバレッジ」と称するものが「みんな幸せ」ではないということに気付かなくちゃいけません。あれが言っているのは要するに、債務のツケを払わせる相手をきちんと選べということです。さもなければポピュリズムが待っているよと。ほら、すぐそこに。

 

政府の負債が家計の負債と違うのは、「ロールオーバーで一定の先送りが可能」でなおかつ「誰に債務のツケを払わせるかを選べる」から家計と違うのであって、負債がフリーランチだからではありません。そのロールオーバーが不可能になるタイミングというのが経験則的に70年前後だというのが長期債務サイクルです。

 

誰が何と言おうと、今の日本の問題は積み上がる債務負担であって、要するに長期債務サイクルが効いてるってことです。だからお金がないの。前借りした分は返さなくちゃ。

 

若者にお金がないない言うけどさ。あるじゃん。目の前に。その見事に塗装された道路や、みんな大好き国民皆保険制度、安全な水、それは全部僕たちの手元にあるはずだったお金で作られたものです。ほら、君の口座にはその見合いとしての国債があるでしょ? え、ない? おかしいな、僕たちは一人当たり800万円だか900万円だかを「国に貸している」んだってネットのみんなが言ってるのに、なんで手元に国債がないんだろう……?

 

ここから減税しようと、政府支出を増やそうと、前借りした分は返さなくちゃいけません。経済は、いつか、どこかで、帳尻があいます。フリーランチはないんです。

 

レイダリオは「所得よりも早く債務を増やさないことが大事。いつか首が回らなくなる。所得を生産性よりも早く増やさないこと。さもなければ競争力が低下する。生産性向上の努力を怠らないこと。長期的に豊かになるにはそれしかない。」と述べていますが、今の日本は生産性よりも早く所得を増やすために債務を所得よりも早く積み上げてきた過去の清算をさせられているわけです。

 

要するに、私たちが国に「貸した」お金は見事に塗装された道路や、みんな大好き国民皆保険制度、そして安全な水に化けたわけです。じゃあどうやって借金を返すんです? 良識ある経済学者しか認めないですが、結局のところ昔無駄遣いしたせいで今お金がないんですよ。あの、皆さん大好きな、えーっと、そう、基礎研究とやらにつぎ込むお金すらね。財政拡張も金融緩和も将来の前借りだとあれだけ警告されてたわけで、これ以上前借りするものがなくなってきたのが今なのでしょう。……それでも民主主義は前借りがお好きなようです。

 

結局のところ、税金で返すか、インフレで返すかの違いしかありません。

 

MMTはインフレを税金で抑えればいいっていいますが、じゃあインフレを抑えるのに必要な税金の水準というのが例えば消費税50%になってしまう、というような事態は考えないのでしょうか? そしてそのような事態になったときに、民主主義国家に増税ができるでしょうか? もしできるというのなら、ソ連は崩壊してますか?

 

ジョブなんちゃらっていいたいのでしたら

ノア・スミス「現代金融理論 (MMT) を詳しく検討してみると」(2019年3月31日) — 経済学101

この記事のある段落に私の言いたいことは集約されています。

 

でも,それでもまだ疑問は残る.そもそも,どうして政府は消防士を必要とするんだろう.火事がひとつもなかったとしたら? もし,実際に消火活動に当たるのに必要となる以上に消防士の人員を雇ったなら,たんに資源の無駄遣いにしかならない――人々に無益な労働をさせて,自給農業かなにかの仕事から遠ざけてしまう.無用の消防士を政府が雇えば雇うほど,この経済の一人一人が貧しくなっていく.(極端な場合を言えば,みんなが政府のために非生産的な仕事に労力と時間を注ぎ込まなくてはいけないときには,みんなしてほんとに飢え死にすることになる)

 

財政赤字が過大なときとはすなわち、政府が消防士を多く雇い過ぎているときであり、それによって経済の潜在成長率は低下してしまいます。ほら、だから僕たちの賃金は落ちている。 

 

そりゃそうだ。本来は別の、もっと生産的な用途に使われるはずだったお金が生産的じゃない用途に転用されるってのが政府支出です。市場に任せた方が政府の役人に任せるより効率的なのはあまりにも自明です。*1

 

すると潜在成長率と等号関係にある実質金利が下がり、なおかつ中央銀行が債務拡大を支えるために名目金利を低く抑えるので、中央銀行の信認が失われるその時までフィッシャー方程式によってインフレ率が下落する。これが日本で起きたことなんじゃないですか? EUでも、アメリカでも起きていることです。*2

 

それを、国債が人気だからだとか、国債がタリナイだとかいう風に解釈するのは何もかもが間違ってます。フィッシャー方程式に国債の「人気度」なんて変数はありますか?

 

でも、財政赤字が「足りない」ということになってしまうのはなぜなんでしょう?

 

私はとりあえず南海泡沫事件とミシシッピバブルの勉強をしようかと思ってます。

 

いや、勉強をせずとも、衆愚に支持された金融緩和と財政拡張のミックスがどのような帰結をもたらすかなんて少し考えれば分かることですが……。

 

そういう意味では逆なんでしょうね。MMTがあるから財政拡張を唱えてるんじゃなくて、財政拡張論者がMMTといういいおもちゃを見つけたのでしょう。

 

しかし、金融緩和がだめなら財政拡張を唱える。教科書のような衆愚っぷりじゃあないですか。*3

 

参考

30分で判る 経済の仕組み Ray Dalio

短期経済予測「ニュー・ニュートラル継続」| 2019年3月 | PIMCO

財政悪化が円金利を低下させる:小林慶一郎教授 – The Financial Pointer®

 

スポンサーリンク

*1:もっとも、政府が必要じゃないという話ではありません。所得の再分配や、公共財の提供、社会保障、また生産性は高いが市場に提供を任せるのが不安なもの(教育など)の提供は政府の仕事かもしれません。しかし、政府が必要以上に支出すればするほど効率性は下がります。いつだって正しいのはミクロ経済学が教えてくれるシンプルな結論です。

*2:もしくは、債務の割に財が増えなかったのでインフレ率が下落した……でも正解だと思います。

*3:個人的には、実際のMMT論者が主張する政策を完璧(財政支出の規模や雇う消防士の数を間違えないというところまで含めての完璧です)に行った場合は社会主義的な再分配政策がその効果になると思います。無職・低所得者層に所得が再配分されるのでしょう。そういう意味では悪くないと思っていますが、しかし、「完璧に」できるのならソ連は崩壊してないとも思いますし、いずれにせよこれまで積み上げてきた債務のツケを払う必要がなくなるわけではありません。レイダリオのモデルにおいて「美しいデレバレッジ」をしたところで一人当たり所得の落ち込みを回避できないのと同じことです。