どうも、あいうえです。
今日はセクターローテーションについてみていこうと思います。
セクターローテーションはややファクター投資に押され気味になっていて、あまり主流の方法ではない感じがしますが、それでもその分かりやすさから人気のある投資手法の一つです。
これまでも景気サイクルごとのセクター投資については色んな記事があったとは思いますが、今日はSPDRの定量的な分析に基づくレポートをみて考えていこうと思います。
以下特に述べない限りにおいて、図表などは以下のリンクから引用したものです。というか、基本的にはここにあるのを和訳したのがこの記事の内容です。
https://global.spdrs.com/blog/post/2019/Feb/building-a-sector-roadmap-for-business-cycles
1 景気サイクルの定義
景気サイクルを使ったセクターローテーションを見ていく前に、景気サイクルの定義をしていきましょう。
今回はThe Conference Board Leading Economic Index® (LEI) (以下LEIと略記)を使って以下のように定義されています。
Recession:LEIが急速に低下している
Recovery:Recessionののち、LEIが長期トレンドの下から上に反発している
Expansion:LEIの過去12か月のモメンタムが正であり、かつ長期トレンドの上にある
Slowdown:LEIの過去12か月のモメンタムがピークをすぎた
ちなみに過去の景気サイクルは以下の図のようになっています。
ラインがLEIそのものではなく、LEIのYoY%になっているところだけ注意ですね。
また、基本的にはExpansionとSlowdownが繰り返されており、Recessionに入る前にはSlowdownが必ず挟まっている(=ExpansionからRecessionに一気に突入することはまれ)であることもわかります。
では、各景気サイクルにおけるセクターのリターンに移りましょう。まずはどのようなリターン分布になっているのかを一通り見たのちに、実際の投資戦略を考えてみたいと思います。
2 Recession
こちらがリセッション期における各セクターのリターンです。生活必需・公益株がよく言われるように他セクターをアウトパフォームしています。ヘルスケアも上々といってよい成績でしょう。エネルギー株も意外と悪くありません。
最下位二つはREITとテクノロジー株ですね。
テクノロジー株はITバブルがあるので少しだけ割り引いてもよさげですが、SPDRの方ではそのようなことを述べていませんし、z-scoreも-7.7と(ちょっとではなく)かなり悪いので、ITバブルを踏まえてもなおあまり成績がよくないようです。
テクノロジー株はビジネス面というよりは、投資家の期待がいつも高いせいでリセッション期の成績が悪くなりやすいのだと思います。
3 Recovery
リカバリー期になると、一般消費財・REITなどのセクターが低金利を背景に上がりやすい傾向があるようです。
一方、生活必需・ヘルスケア・公益のリセッション三兄弟は仲良く泥に沈んでおり、市場の雰囲気が反転しているのを感じさせます。
4 Expansion
Expansion期になると、Recoveryと同様にRIETが強さを見せる一方で、金融・テクノロジー株が強くなるようです。また、一般消費・工業株なども安定したリターンの高さを誇っていますね。
そして弱いのは相変わらず生活必需・ヘルスケア・公益株です。
5 Slowdown
Slowdownな時期になると、株式市場が混乱するのか、生活必需・ヘルスケア株がアウトパフォームするようです。公益株は金利が上昇しているのを背景に伸び悩む感じでしょうか?
一方、一般消費・素材・REITなどの景気に敏感なやつらはかなりビビるようです。
6 どのようにセクターローテーションをするのか考えてみる
一通り見終わったので、ここで一度まとめの図とグラフを挟みます。
ふむふむ……という感じですね。
ただ、この中で言えばエネルギー株と素材株についてはあまり参考にしない方がいいという話がSPDRのレポートの中でされていますし、私もそれに賛成します。
なぜなら、エネルギー株や素材株は景気サイクルというよりも資源価格で動く側面が大きく、あまり参考にならないからです。
それを踏まえた上で他のセクターについてみていきましょう。箇条書きでいこうと思います。
一般消費セクター
一般消費財セクターはRecoveryからExpansion期にかけて強い傾向があるので、株価の戻りを取りたいという場合に適しているセクターだと思われます。
一方、いざリセッション入りしたときはともかくとして、Slowdown期の成績が悪い傾向にあるので、ExpansionとSlowdownが頻繁に入れ替わることを考えると普段からロングするのに適しているセクターではなさそうです。
生活必需品セクター
生活必需品セクターははっきりしており、景気がいいと最悪のパフォーマンスを、悪いと最高のパフォーマンスをたたき出します。
ただ、Expansion期も公益セクターほど悪い成績ではないので「景気が怪しくなってきたな、でもどうだろう……?」というあたりでオーバーウェイトするのに適していそうです。
金融セクター
金融セクターはExpansion期に成績がいいのはともかくとして、全体的に色のない成績を残しています。
とはいえ、低金利が常態化している現代においてこれまでどおりの成績を残せるかというと疑問符がついてしまいます。なので、オーバーウェイトもアンダーウェイトもせずに、ニュートラルなポジションを取るのが無難だと思われます。
ヘルスケア
ヘルスケアも生活必需と同じ特徴を有しているので、二つのバリュエーションを見比べながら好きな方を買えばいいと思います。
工業株
Recession期以外は安定していい成績を残しているので、リセッション入りする恐れのあるSlowdown期以外に適当にロングするのに適しているのではないでしょうか。
その意味でSlowdown期でのオーバーウェイトを推奨しているSPDRのレポートは疑問です。
REIT
生活必需・ヘルスケアと真逆の特徴を有しており、使い方も真逆になると思います。ただ、ExpansionとSlowdownは頻繁に入れ替わることを踏まえると、やや扱いづらいセクターだと思われます。
テクノロジー
とにかくRecession期の成績が悪いことを除けば、Slowdown期もそれほど悪い成績ではありません。これも気軽にオーバーウェイトできるセクターだと言えるでしょう。
公益株
公益株も生活必需・ヘルスケアと同じ特徴があります。配当利回りが高いので、配当金が好きな人にはお勧めだと思います。
まとめ
個人的には、ある特定の景気における強さだけではなくて、そこから隣接する景気におけるリターンを気にしながらセクターローテーションしていくのがいいのかなと思います。
ExpansionならSlowdownの、SlowdownならExpansionとRecession両方を見据えたセクターを選ぶのがよいと思います。そういう意味で、SPDRが推奨しているセクターのグラフと私の意見は微妙に違います。
さいごに
ということでSPDRの資料をもとにセクター投資についてみてみました。
セクター投資はファクター投資に比べ、リターンの要因の説明がしにくく、かつ将来に渡って継続するかが分かりにくいということで長期投資としては微妙になってきましたが、景気サイクルに応じたセクター投資ならば悪くないと個人的には思っています。
(つまり、長期的にどのセクターがアウトパフォームするかの予測・説明は難しいが、景気サイクル別の利用なら使えるのではないかということです)
また、当然ながらファクター投資を組み合わせて使ってみてもよいと思います。
この記事が皆さんの投資の参考になれば幸いです。
お読みいただきありがとうございました。