とあるオタクの長期投資

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広告費用前営業利益という謎指標についての研究


どうも、あいうえです。

 

今日は少し前にTwitterを騒がせた「広告費用前営業利益」なる指標について考えたことを書いてみようと思います。

 

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1 広告費用前営業利益の言いたいことは理解できる

 

広告費用前営業利益という言葉は株式会社ロコンドの投資家向け資料に出てきた言葉です。

参照:IR | 株式会社ロコンド – LOCONDO,Inc. 2019年2月期 第1四半期決算説明会資料

 

普通に考えて、広告費用が0だと仮定した場合の営業利益だということでしょう。上記の資料では「広告費用前営業利益が+122%と+100%の目標を超えた!」みたいなように使われていました。

 

この耳慣れない言葉に対しては

 

 

のような社長による解説がある一方で、馬鹿げているという声も少なからずありました。かくいう私も最初はなんだその馬鹿っぽい指標はと笑ったものです。

 

しかし、よく考えてみると私たちは似たようなものをよく使っていることに気付きます。

 

それは調整済みEPSという指標。え、使ったことないですかそうですか。

 

EPSは一株当たり利益ということで非常に注目度の高い指標ですが、米国においては名だたる大企業のほとんどがこのEPSについて調整済みEPSというものを発表しています。一般には、長期的な株主利益には関係ない一時的な費用を控除したEPSのことを指します。

 

これについては私よりも詳しく知っている方が書いているブログさんがあるのでリンクを張っておきます。調整済みEPSの説明だけでなく問題点まで書かれてる記事群です。

調整後EPSで計算したPER、もしくは予想PERを見るようにしよう!

調整後EPSの開示例(ジョンソン&ジョンソン)

一時的であれ何であれ、すべての費用は株主に帰属する

【調整後利益】ターンアラウンドできるかどうかを見極めるための材料の一つに

ブログ名:Grow Rich Slowly シーゲル流米国株投資で億万長者になる!

 

ロコンドはまだ赤字企業なので、調整済みEPSの代わりとしての調整済み営業利益ともいうべきものとして「広告費用前営業利益」という指標を使っているものと思われます。既に投資してくれてる人に対して「今は赤字でもちゃんと黒字化する見込みがある」ということを説明する必要がありますしね。PERに対するPSR的な感じ?

 

2 広告費用前営業利益という指標の問題点

 

とはいえ、いくつか気になる点が広告費用前営業利益に存在することも事実です。

 

私が思いついた問題点を書いていきます。

 

1 広告費は「一時的」な費用なのか?

 

今や広告を打っていない企業はありません。

 

ロコンドと同じEC業界の王者AMAZONだって例外ではありません。CMは私の記憶が定かではないのですが、街中でAMAZONの広告を何度も見たことがありますし、インターネットでもしばしば見かけます。

 

強いているならば広告を出している側Googleは広告をあまりみませんが、それでもトラフィック獲得コストという独特のコストを支払っています。

 

つまり、ロコンドが今後大企業になったとしても広告費は必要とし続けるわけで、今の事業規模に対して過大な広告を打っていることが広告費を控除してもよい理由にはなりえないのではないかと思います。

 

広告代含めたら赤字だけど、それ抜きだと黒字だよ!と言われてもさいですかとしかいえません。

 

調整済みEPSという指標はあくまで、「一時的な」費用を紛らわしいからなかったことにしようというものです。一時的な出費だからねと。

 

しかし、広告費のような恒常的な出費をなかったことにするというのは変な感じがします。人件費前営業利益とか見たら「は?」って思いますよね。それと同じ感じです。

 

2 広告費を全額控除することへの違和感

 

極端な話、広告など打てば売り上げは伸びるわけです。

 

というか、伸びなかったらおかしいです。

 

なのに、広告費が0だった場合の売り上げはこれです!ってやっぱり変な感じがします。

 

もちろん、知名度を上げることによって将来の利益が増えているということはあります。広告でロコンドを知って利用してくれた人がリピーターになればロコンドは将来的には広告費以上の利益を得られるのでしょう。

 

しかし、そうなのであればなおさら四半期の営業利益に対して広告費用前営業利益というものを出す必要性が理解できません。上で書いた考え方を適用するのであれば広告費にも減価償却的なものを適用するのが自然です。

 

3 オリジナルな指標への懸念

 

(注:この項で述べている内容はあくまで一般論であり、ロコンド社についての話ではありません)

 

先ほどリンクを貼った記事では調整済みEPSの乱用に対する懸念が述べられていましたが、私もオリジナル財務指標に対して同じ懸念を表明したいです。

 

利益というものはしばしば企業の「意見」でしかないと言われます。真実を語るのはキャッシュフローであると。なぜなら、利益はある程度「合法的に作る」ことができるからです。

 

それでも一応公式に定められた会計基準である利益ならば、合法的に作れる利益の範囲には限りがあるので信用することにしてもいいのですが、オリジナル財務指標は文字通りオリジナルなものです。完全なる会社の意見です。

 

広く使われている(?)とはいえ広告費用前営業利益という指標は、私にはかなり「怪しい」指標に思えます。先ほども申した通り、広告を打てば利益が上がるのは当然なわけでして、つまり、広告費用前営業利益という指標は+100%などと言った見栄えのいい数字がほぼ必ず出るのです。しかも、投資家は適正な広告費用前営業利益の伸び率を知る術がありません。+100%という数字が良い数字なのか悪い数字かのかもわからないのです。会社の予想を上回った?そんなの保守的な予想をすればいいだけです。

 

赤字のグロース株はどうにかして資金を集めないといけないので自分の事業をできるだけよく見せようというインセンティブが生まれます。景気のいい数字が必ずでる広告費用前営業利益などというものはそういうときに便利でしょう。もちろん、適正な範囲においては全く問題ないですが、一歩間違えれば詐欺なのも事実です。心苦しいですがこれを指摘しておくことは必要でしょう。

参考:ジム・チャノス:景気・金融サイクルと詐欺・不正  ファイナンシャルポインター

 

オリジナルな指標を参考にするというのは会社の発表する「意見」を鵜呑みにするに等しい行為です。もしその会社が詐欺師だったら、詐欺師の言うとおりに行動するに等しいことになります。せめての対策として、正規の会計報告書及びキャッシュフローを絶対に見るべきでしょう。

 

ロコンド社は上場してるだけあってそこらへんはしっかりとしていて、広告費用前営業利益のパワポには正規版の会計報告も載せていますし、社長自らがネットで話題になったことを受けてコメントをTwitterで残しているのも好感度が高いでしょう。株主総会でも質疑応答をしたみたいですし、少なくとも詐欺をやっているようには思えません。

 

しかし、それとロコンド社の将来がロコンド社の主張するほど明るいかは別の話です。例えばテスラは創業者の強気姿勢と株価に織り込まれている期待の割には著名投資家から「詐欺」だと叩かれてたりします。テスラがどうなるかはわかりませんが、少なくとも、会社の発表する「意見」を鵜呑みにしないという姿勢は崩してはならないものです。特に、利益が出てることを前提としている伝統的な指標(EPSなど)がうまく機能しない赤字グロース株ではそのことを忘れてはなりません。

 

最低でもこの記事で行われた程度の考察はしてしかるべきでしょう。

 

さいごに

 

とりあえずもう一度書いておきますが、最後の詐欺に注意しよう系の話はロコンド社とは一切関係のない一般論です。というかロコンド社の決算発表をまともに読んでないので、ロコンド社がどうなのかはよくわかりません。

 

しかし、広告費用前営業利益という指標は会社による「広告打ったらちゃんと売り上げ伸びたよv(^-^)v」という報告でしかないというのは重要なことです。ぶっちゃけ、誕生日を迎えたら年をとったよレベルのものです。

 

同じ費用でも、設備投資や新規事業への投資による費用ならまだ理解できるのですが、広告費を控除するというのはやはり問題点があるように思えます。広告というものがどれほどの価値を持つのかは非常に測りにくく、投資家も評価しづらいからです。例えばロコンド社の+122%という数字が優れた数字なのか微妙な数字なのかを判断できる人がいるでしょうか?

 

広告費用前営業利益というものを使うことが悪いとはいいませんが、しかし、出されたところで「お、おう」となってしまいます。人件費前営業利益とか光熱費前営業利益とかと同じようなものに見えます。

 

ということで「なんで売上の伸び率を示すだけじゃだめなの?」という素朴な疑問を投げかけてこの記事は終わりにしようと思います。

 

お読みいただきありがとうございました。

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