どうも、あいうえです。
今日は個人的に気になっているリスクパリティ戦略についていろいろと語ってみようと思います。
そもそもリスクパリティってなに?という人から、リスクパリティを実際に行ってみたい人まで幅広い人に役立つ記事にすることを目標としています。
1 リスクパリティとはなにか
リスクパリティ戦略とは、ポートフォリオに含まれている各資産のリスク寄与度が同じになるようにポートフォリオを組む戦略で、バックテストによる成績が良いことから長い間注目を集め続けています。
また、投資の世界でいうリスクというのは基本的に標準偏差のことを指すのですが、リスクパリティ戦略における「ある資産リスク」というものがその資産の標準偏差を指していないことには注意が必要です。
なぜなら各資産の間には相関係数が存在しているので、各資産の組み入れ割合を標準偏差によって決めたとしても各資産のリスク寄与度が同じにはなりません。
リスクパリティ戦略においては相関係数もちゃんと考慮した上で各資産の組み入れ割合を決定します。
また、これが後々のこの記事のテーマになってくるのですがリスクパリティ戦略において各資産のリターンというものは一切考慮されていないことにも注意が必要です。
また、あくまで各資産のリスク寄与度を同じにする戦略であり、完成したポートフォリオのリスクをコントロールする戦略ではないことにも留意が必要です。
結構注意点が多い戦略なんですね。
2 リスクパリティ戦略の長所
リスクパリティ戦略が人気を博しているのは最初に述べましたが、なぜ人気なのかというものをこの項では考えていきましょう。
リスクパリティ戦略の長所はその圧倒的なシャープレシオの高さです。
リスクがパリティされている(パリティって動詞じゃない気もしますが)という性質なのかしりませんが、リスクパリティ戦略が誇る圧倒的なシャープレシオは普通の株式100%はもちろんとして多くのポートフォリオ構築手法を上回ります。
債券の割合が多くなりがちという性質もあり、リターンは飛びぬけて高いものではないのですが、シャープレシオが高いという性質はリターンが非常に安定していることを指します。
その結果、着実なリターンを得られるということ、そしてレバレッジを使うことで投資成績を大幅に向上できるということなどもあり大きな人気を集めています。
参考:なぜシャープレシオが大事なのか【シャープレシオを気にする意味ってあるの?】
3 リスクパリティ戦略の短所
しかし、リスクパリティには大きな問題点があります。いいところばかりではないんです。
そのうちの一つはリスクパリティがバックミラー性の強い投資法だということです。
リスクパリティは構築手法が「過去のデータを見てリスク寄与度が同じになるようにする」というものなので未来が過去と違う動きをした際に弱いです。
例えば、株式においては上昇相場においてはボラティリティが低くなり、下落相場ではボラティリティが大きくなる傾向があります。さらに言えば、VIXを見る限り近年はこの傾向が大きくなっています。
そのため、リスクパリティ戦略は「上昇相場で株式の組み入れ割合が大きくなり下落のダメージを大きく負う→下落後のリバランスで株式の割合を減らす」というなんとも初心者っぽいムーブをします。実際、長い目でみるとリーマンショック以降株式の組み入れ割合は少しずつ上昇していますし、少し大きめの下落が起きるとその後株式の割合を減らす動きも確認できています。
もっとも、それを込みでリスクパリティ戦略はいいリターンを挙げてきたのでそんなの気にしなければいいじゃんという話ではあるのですが……。
そしてもう一つの、より大きな問題が、何十年も続いた債券市場の強気相場問題です。
一旦ここまで出てきた情報をいったんまとめてみますとこうなります。
1 リスクパリティ戦略は仕組み上債券の組み入れ割合が多くなりがち
2 リスクパリティ戦略はシャープレシオが高い
ではここにもう一つ情報を付け加えます。
3 ここ30-40年の債券は金利低下トレンドのおかげで非常にリターン・シャープレシオがよかった。そして、もはや金利に低下余地はほとんどない
Total Return last 20 years...
— Charlie Bilello (@charliebilello) 2018年6月26日
S&P 500: +244%
Long-Term Bonds: +250% pic.twitter.com/RgMsyuML88
また、これについてあるリサーチはこのように述べています。(孫引きみたいになってるのは許してください)
飯田(2012)による伝統4資産を対象にしたバックテストでは、RPポートフォリオはリターンの 40%強を国内債券より得ていました。4 資産なので、リターン寄与は25%分が期待されていたのですから、望外に大きい貢献であったということです。しかし、こうした債券の好パフォーマンスを将来も期待できるでしょうか。
http://www.smtb.jp/business/pension/information/center/operation/pdf/07_04_35_31.pdf
どばばーと3つほど参考資料を上げてみましたが、そのいずれも(一つは私のですが)長引く金利の低下トレンドとそれに伴う債券の過大評価のおそれについて問題意識を抱いています。そして、債券がここ数十年異常なまでにいいリターンをあげてきたことがリスクパリティ戦略の過大評価にもつながっているのではないかということでもあります。
こう書くと、金利が上昇トレンドに入って債券が弱気相場を迎えたらリスクパリティ戦略は債券の組み入れ割合を減らしたうえでいい感じのポートフォリオを提示してくれるんじゃないの?と思われる方がいるかもしれません。
しかし、私はこうも書いていました。
リスクパリティ戦略において各資産のリターンは一切考慮されていないと。
リスクパリティ戦略はあくまで各資産の標準偏差及び相関係数からリスク寄与度を等しくする戦略です。
なので、リスクパリティ戦略がリターンの面、そしてシャープレシオの面で今後もうまく働いてくれる保証などどこにもないのです。
なぜなら、リスクパリティが保証してくれるのはリスク寄与度が同一であることで、完成したポートフォリオのリターン・標準偏差・その二つから導き出されるシャープレシオではないからです。
もっとも、未来を保証してくれる戦略なんてないのですが、リスクパリティは少なくともバックミラーにおいては高いシャープレシオを保証してくれました。しかし、債券相場が弱気入りすると、そのバックミラーにおいてすら高いシャープレシオを保証してくれなくなります。
というか、弱気入りしなくても金利がゼロに近い世界において債券は能無しですから、リスクパリティの高いシャープレシオを支えてきた要因が一つ消えてしまうことには変わり有りません。
大事なのは金利にもはや低下余地がほとんどないということ一点だけなのです。
債券の強気相場が強制的に終わってしまうような世界において、リスクパリティは使えない子になってしまうかもしれません。これは大きな問題です。
少なくともアメリカにはまだ金利の低下余地が残ってはいますが、それはほとんど残っていないことの裏返しでもあります。日本、欧州など、金利の下降余地がなくなってしまった先進国の例には事欠きませんからね。
4 リスクパリティの短所を踏まえて
リスクパリティの短所で述べた二つ目の短所はこう言いかえることができます。
株式と逆相関をしつつ、かつ高いリターンを上げてくれた米国債のような都合のいい資産がなくなってしまう状況においてリスクパリティの優位性はないかもしれない。
このブログではその問題意識を踏まえた上でもう一歩進んでみたいと思います。
ではそんな都合のいい米国債の代わりになるものはいるのか?という探求の旅です。
まず考えられる資産は金でしょう。
金は多くの資産との相関係数が低いという意味において、もともとリスクパリティと比較的相性のいい資産です。
それに、債券の弱気相場突入条件がインフレ率上振れであることを考えると、金はインフレにとても強い資産という意味でもGOODです。
株式・債券・金でのリスクパリティは比較的いい手段であると言えるかもしれません。
とはいえ、金利が底にへばりつく展開になったときに金がどのように動くかは少なからず難しいところがあります。ここが問題点ですね。
また、株式と逆相関をしつつ、長期的かつ継続的にその価値が上がってきた資産として他に「円」というのを実は挙げられるかもしれません。
……あれ、というか、完璧じゃね? チャートを見るまでもありません。
とはいえ、円で生活する我々が円について投資をする際にどのようにすればいいのかということについては少しだけ疑問があります。レバレッジを2倍にしてドル円をショートすればいいんですかね……? でも、スワップ云々で意味がなくなりそうです。だったら普通に円を持つだけでいいんですかね……?
なんか、資産の世界に通貨が絡むと難しくてよくわからないです。逆相関という側面から言えば米ドル建ての短期債よりは意味がありそうですが。
また、円相場の動きも未来永劫これまでと同じではないことにも注意が必要です。
……やっぱり円を使うのは止めておいた方が賢明かもしれません。
さいごに
ということで、リスクパリティという手法の紹介と私の考えをだらだらと書いてみました。
正直、過去のリターンほどは未来は明るくない投資手法だろうというのが私の結論です。
長引く金利の下降トレンドの底ともいえる近年において、債券というのはともすればもっとも過大評価される資産であるといっても過言ではありません。
それを踏まえた上で戦略を立てる必要があるのです。
皆さまはどのように思われたでしょうか?
お読みいただきありがとうございました。
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この記事で書かれたことを踏まえても、バランスの取れたポートフォリオを維持することを当ブログでは推奨しています。