どうも、あいうえです。
今日は近頃高騰している原油価格について考えたことをまとめようと思います。
CFD取引によってコモディティ投資全般が行いやすくなった現在ちょっと手を出してみようかなーと思っている人も多いと思いますので、その一助になれたら幸いです。
1 現在の原油価格は割高なのか否か
2018年4月現在原油の価格は65ドルを超えている感じです。
まずはこの価格の妥当性について考えなければならないのですが、長期的な目線で見るとまず間違いなく割高であると言えます。
その根拠はやはりアメリカのシェールオイルを始めとした原油生産です。
アメリカのシェール企業の採算が合う価格というのがおおよそ50ドル前後(最近ではもっと安いと言われている)なので、60ドルならばともかく65ドルともなるとシェール企業による増産を受けた原油価格の下降が予想されます。
OPECがいくら頑張って減産しようとも、非OPEC国の増産がそれ以上のペースで進めば長期的には原油価格が下降するのは自然な論理です。
ということで、需給ベースで考えると今の原油価格は割高であると導き出せます。
とはいえ、需給ベースで考えた際の原油価格の妥当性というのは難しいです。
今は供給面から原油価格を考えましたが、世界同時好景気における需要の増加を踏まえると今の価格が正当化される可能性もあります。
2 なぜ今の原油価格は高いのか
ということで、次は現在の原油価格が高い理由を考えなければならないのですが、その理由はほぼ全て地政学リスクの一言に集約されます。
(投機的な資金の流入もあるはずですが)
シリアはともかくとして、サウジアラビアとその愉快な周辺国の動向はなかなかに怪しいです。
ただ、この中東の地政学リスクが、原油価格をその考えられる適正価格から最低でも15ドル押し上げる実力があるのかというのは見極めなければなりません。
まあ、本当に見極めることができたならば困らないのですが、ここでは少し視点を変えてみましょう。
そもそもの話として「あからさまなリスク」は基本的には実現されないというのがあります。
歴史上の例を出すならば東西冷戦がそうですし、直近の例で言えば北朝鮮問題、シリア空爆だってそうです。
シリア空爆に際してロシア人に危害が及ばないように相当な調整がなされたと言われています。なぜなら空爆をした三国もロシアも、自分たちが軍事的に衝突するような事態になったらヤバいとわかっているからです。
全員が「リスクだ」と考えているものはよほど不幸なすれ違いがない限り実現することはないのです。
……歴史上その不幸なすれ違いが起きた例も枚挙にいとまがないのですが。
逆の例を出せば、リーマンショックではごく一部の人を除いて誰しもがリスクだと考えていなかったところから危機が起きたのです。だからあれほどの事態になったのです。
これを踏まえると、中東における地政学リスクはいつか解消されると考えて問題ないでしょう。
逆説的ですが、市場がリスクを織り込んでいるということ自体がリスクが実現しないということを示しています。
ということで、今現在原油価格を押し上げている要因側から考えても、今の原油価格は割高であると言えます。
3 原油価格の高騰を踏まえたトレードの例
これまでの議論を踏まえ、原油価格が割高であるという結論が正しいものであると仮定した場合に考えられるトレードについて考えてみましょう。
1 CFDを利用した原油の空売り
今はとてもいい時代でして、CFDを使えば数千円単位から原油の空売りができます。
何十万も用意して先物を取引する時代に比べるととてもとてもいい時代ですね。
とはいえ、CFDを利用した空売りは少し気になるところがあります。
原油価格というのは先物を利用しているので、ちゃんと先物の限月ごとの表を見てあげなければなりません。見てみましょう。CFDもやってること自体は先物取引ですからね。
ほれぼれするくらいにきれいなバックワーデーションになっています。
そして、このバックワーデーションであるというのが原油の空売りを非常に躊躇させます。
例えば、年明けには原油価格は下がっているだろうと思って今空売りを始めるとしますと、見るべきはJAN/2019の原油価格です。今よりもおおよそ3ドルくらい低い価格ですね。
この場合、年明け時の損益は売り始めた時の原油価格(直近の限月の原油価格)ではなく、売り始めた時のJAN/2019の原油価格との比較できまります。
要は、3ドル分のハンデを背負った状態から売り始めなきゃいけないわけです。
まぁ、3ドルくらいなら大きなハンデではないのですがなんか気分が嫌です。
それに、バックワーデーションの状態はあまり仕掛けない方がいいという原則があります。(特に個人投資家)
バックワーデーション状態のときはしばしば市場が「はわわわわっ\(;≧ω≦)/」
となっているのでそのようなときは個人投資家は仕掛けない方がいいのです。ヘッジファンドの餌になるというやつですね。
正直3ドルはどうでもいいのですが、私はこの原則に従って少なくとも今はCFDでの原油売りは仕掛けません。
2 原油関連セクターの空売り
これはまず間違いなくノーでしょう。
原油価格の回復を受けてもなお低迷していたエネルギーセクターを今から空売りしたところでリスクとリターンが明らかに見合ってません。
原油関連セクターは原油価格の遅行指標だという話すらあるので、普通に上がる可能性の方が高いです。
3 ジャンク債の空売り
一番テクニカルな方法ですが、一番ましな仕掛けだと考えられるのがジャンク債の空売りです。
シェール企業は一大ジャンク債発行体なので、原油価格の下落はジャンク債に響きます。
しかも、ジャンク債の性質上株式市場の下落のヘッジにもなります。最近の不透明な株式市場を踏まえると、複数の意味を持たせられるという意味で非常においしい取引です。
しかし、近頃の株式市場の混乱の影響既に価格が少し落ちており、そういう意味では微妙です。
最近の原油価格の上昇のおかげで株式市場の混乱の割には堅調なのですが……。
4 MLPの空売り
MLPに関してはむしろ私は買っているのですが、検討しないのはだめでしょう。
とはいえ、買いに値するかはともかくとして、空売りには値しないと思います。
MLPは近頃の堅調な原油価格に反してボロボロに下落していますし、今から売ったとして、原油関連株式と同じくリスクとリターンが合っていないように思います。
というか、MLP価格は原油価格と一定の相関がみられるものの、実際には原油価格とMLPが稼げるキャッシュフローの間に相関はあまりありません。
MLP事業者は長期契約を結んでいるので、短期的な原油価格の変動の影響を受けないのです。
まとめ
近頃の原油高を利用できないか考えてみましたが、ジャンク債の空売り以外はいまいちというのが私の結論です。
そのジャンク債の空売りも正直魅力的な取引ではないので、私は原油関連の仕掛けは行わない予定です。というか行ったってねぇ……。
CFDを使った原油自体の空売りについては勝算は高いとは思いますが、バックワーデーション時には仕掛けないという原則に従って私は行いませんし、そこら辺の取引に慣れている人以外は行わない方がいいでしょう。
行うにしても半年、一年先を見据えた取引にして、あまりポジションを拡大しすぎないのが吉です。
私はコンタンゴに戻った時に原油価格がなお高位で推移していたらCFDでの売りポジションを持ちます。
原油は実力以上に高いというのが私の見立てではあるのですが、だからといってトレードする必要はありません。
かの大山15世名人は言いました。「一回目のチャンスは見逃す」と。
今の原油高は一回目のチャンスです。見逃します。というか、下手したらチャンスですらないかもしれません。
というか、もうしばらく原油価格は高値で推移しそうです。
二回目のチャンスがもし来たら、その時はまた考えましょう。
お読みいただきありがとうございました。
以下過去記事の宣伝。
今後原油関連で仕掛けるなら逆張りでの売りがいいとは思いますが、逆張りの際の心持について書いた記事もあります。よろしければどうぞ。
景気が悪くなっても原油価格は下がるので、株式のロング + 原油系のショートみたいな感じで仕掛けるならばある程度の損は許容できるかもしれません。上で述べたジャンク債の空売りも同じ考え方に基づいています。